Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • 二ツ塚ふたつづか

    旧二ツ塚峠の頂(イタダキ)に、小さな二つの塚がある。

    桜の木の根元にあって、今も花や水が供えられている。

    むかし、この山のふもとに母と幼い娘が住んでいた。

    母親は病気で、だんだん悪くなるばかりだった。 母親は、自分の死の近いことをさとった。

    ある日、見舞いにきてくれた近所の人に、母親はこんなことをいった。

    「わしは、もうすぐ死ぬ。 今までわしは、他人のために何も役に立つことをしないできてしまった。 お願いだよ、この峠の頂に、わたしを息のあるうちに埋めてくれないかね。」 近所の人は、びっくり。

    「あにいうだよ。 もうすこしたてば、きっとよくなるだよ。」

    「気休めなんかいわねえでくれろ。 わしにはわかってるだよ。 わしを埋めてくれれば、死んでから、かならずこの峠の安全を守ってやるだよ。 なあ、たのむよ。」

    母親は、こういいはってきかなかった。

    すると、それをきいていた幼い娘が「母ちゃんが行くなら、わたしもいっしょに」と泣きだした。

    しかたなく村人たちは、大きなカゴに母子をいっしょに入れて埋めてやることにした。

    村人たちは、カゴを峠の頂に埋めて、二つの塚をつくって弔ってやったということである。 桜の幹に、こんな歌を書きつけた木札がさがっていた。

    古の峠の道は変われども

    塚となりてぞ今に残れる