Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • でえたらぼっち

    むかし、むかし、大むかしのことだ。 でえたらぼっちという、そりゃでっかい男がいたあだと。 なんでも山から山へ足をかけて谷をひとまたぎするほどだったあだと。

    ある日、でえたらぼっちはな、富士山へいくべえと思って、このあたりを通りかかっただあと。

    でえたらぼっちが片足をかけたところが黒沢の裏山にある 「デイダラボッチ」っていう凹地(くぼち)よ。 もう一方の足は、霞丘陵にかかって小曽木谷をひとまたぎしたのよ。 ところがその時、どういうわけか、でえたらぼっちは、つんのめりそうになっただあと

    「おっとっと・・・・・」 でっかい体をささえようと片手をついた。 そこが厚沢の大手というところよ。 片手はついたが、もう一方の手にもっていたキセルからタバコの火がぽろりと落っこった。 落っこったところが柚木の岨端沢(そばざわ)なんだよ。 それがほれ、 あの火打岩(ひうちいわ)っちゅう大岩なあだと。

    でえたらぼっちは、 とてつもなく大きかったけれど、のんき者でやさしかったらしい。 関東地方には、あちこちにでえたらぼっちの話がある。 どこの話でもやさしい。

    怪獣のように大きな男は、空にぽっかり浮かぶ雲をひょいとつかんでワタガシのように食べたり、 海までひとっ走りして魚を手づかみにしたりしていたのだろう。 こわいものなんかなにもない。 狼や熊などノミみたいにひねりつぶしてしまう。 眠たくなると山を枕にぐうぐうひるね。 なんとおおらかな怪物だろうか。