Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • 猪とらさんししとらさん

    とらさんは、日の出村に住む狩人である。 猪とりの名人なので、猪とらさんといわれていた。

    ある秋、とらさんは御岳山にのぼった。 あちらこちらと山を歩きまわったが、どうしたことかウサギ一匹捕まらなかった。

    しかたなく、富士ヶ峰(ふじがみね)の丸山というところまで帰ってきた。 杉木立の下に墓地があった。

    ふと見ると、墓石のかげに、一匹の狼がうずくまっている。

    「しめた。 狼でも獲物にすべえ。」

    とらさんは、鉄砲をかまえるやいなや、

    ズダーン! その一発は、みごと狼に命中した。 狼にかけよろうとしたときだった。

    墓石だとばかり思っていたまわりの石が、なんと狼に変わっているではないか。

    「な、なんだ、こりゃ!」

    狼たちは、らんらんと目を光らせ、とらさんをにらみすえている。 恐ろしさにとらさんは、腰をぬかさんばかり。

    「お、おたすけ・・・・・。」

    とらさんは、ころがるように御師の家にかけこんだ。

    そのとたん、グワラ、グワラ・・・・・。

    ものすごい山鳴りがはじまった。

    「じ、じつは・・・・・。」

    とらさんは、御師にわけを話した。

    「とんでもないことをしましたね。 狼は、山の守り神、それを鉄砲で撃つなどもってのほか。 しかたがありません。 狼をねんごろに弔ってやり、怒りをしずめてもらいましょう。」

    ふたりは、急いで狼を弔い、御師は山をしずめる祈とうを行った。

    すると、だんだんに山鳴りはおさまったということである。