やはり金剛寺の良深僧上の話である。
永禄のころ、良深僧上は、金剛寺の境内に壇(ダン)を築いて雨乞いの祈とうをした。
僧上の祈とうが佳境(カキョウ)に入ったとき、とつぜん大風がまきおこり、豪雨となった。
そして、壇に飾ってあった水盤(スイバン)の竜索( )二つのうち一つが、風に乗ってとびだし天ヶ瀬淵(アマガセブチ)にしずんでしまった。
人びとは驚(オドロ)いて、もう一つがとびださないように、水盤に金網(カナアミ)をかけてしまった。
この「竜索」とは、青色のコヨリで竜の形をつくったもので密教(ミッキョウ)の祈とうに使われるものである。
この水盤は、「雨乞鉢」といわれ、寺の宝となっている。