Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • 山上の霊木さんじょうのれいぼく

    むかし、 成木の山の上に1本の楠(くす)の老木があった。 大人が3人がかりで腕をまわしてもとどかないほどの大木で、 まるで、成木谷をにらみすえているかのようであった。

    いつの頃からか、 この老木は、 夜になると青白いあやしい光を放つようになった。 その上、 時々けものとも人間とも思えぬぶきみなうなり声を上げた。

    村人は、 恐ろしさに近よる者もなかった。 この噂は遠くまで広がり、 ちょうど東国を巡錫(じゅんしゃく)しておられた僧行基(ぎょうき)の耳に入った。

    「うむ、 何か深いわけがありそうじゃ。 わしがみてしんぜよう」 行基は、 わざわざ楠のある山上へやってこられた。

    じっくりと大木を見上げていた行基は、 やおら木の下で座禅を始めた。 村人が見守る中、 行基の座禅は続き、 やがて夜はふけた。 あたりは真の闇。

    と、 楠がザワザワと枝をゆすり始めた。 それは、 まるで青い炎に包まれたようだった。

    そのうち、 炎の中に忿怒(ふんぬ)の形相ものすごい軍茶利明王(ぐんだりみょうおう)のお姿が浮かび上がったのだ。

    「おお、 これは! そうであったか。 この老木には軍茶利明王の霊がやどっておられたのか。 あの光は、 この木が枯れてしまわないうちに明王のお姿を刻み、 この村の守り本尊にせよとのお告げであったのか」

    行基は、 すぐに村人にこの大木を伐り倒させた。

    そして、 1丈2尺(約3.6メートル)の軍茶利明王の像を刻んだ。 また、 一宇(いちう)を建立してこれを安置した。 これが、 安楽寺の基であるという。

    成木の語源は、 木が鳴った、 鳴木、 すなわち成木となったのだそうである。