Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • あずき洗いの女あずきあらいのおんな

    沢井三丁目の中風呂に湧水を引いた堀がある。  近所の人は、これを飲み水にしたり、野菜や鍋釜を洗うのに使っている。

    ある晩おそく、平蔵じいさんがここを通りかかった。

    すると、堀のほうで、ザク、サクという音がする。

    「いまじぶん、だれだんべ。」

    平蔵じいさんは、ふしぎに思って闇をすかして見た。  ひとりの女が、あずきをといでいた。  しかも、女は悲しそうにすすりあげながら、手を動かしている。

    うすきみ悪くなったじいさんは、足音をしのばせて逃げ帰った。

    翌朝、平蔵じいさんは、おそるおそる堀をのぞきに行った。

    女はいなかったが、堀に塵(チリ)や野菜くずがいっぱいつかえて汚れていた。

    「そうか、ゆうべの女は、堀の神さまだったのかもしれねえ。  ここを汚されて、泣いていたのか。」

    平蔵じいさんは、そう気がついた。  さっそく、ごみをとりきれいに掃除(ソウジ)をした。

    その話をすると、だれも堀を汚す人はいなくなったそうである。