むかし、嫁入りは、行列をつくって歩いていった。
ある日、嫁入り行列が二ツ塚峠にさしかかった。 花嫁は、黒地に花もようの着物、髪は高く、結って花かんざしやこうがいをつけていた。
長い峠道を、花嫁行列はしずしずと進んでいく。 やっと峠を越えたとき、花嫁のそばにつきそっていた仲人が、びっくりしてさけんだ。
「あれっ、嫁さんのかんざしがねえ。 どうしちまったんだよ。」
見ると、たしかにさっきまでつけていたはずの、かんざしもこうがいも、ひとつもないではないか。
「おい、この峠は、よくキツネがでるっちゅう話だ。 もしかしたら、キツネのいたずらかもしれねえぞ。」
供の人たちは、大いそぎで峠の頂(いただき)までひきかえしてみた。
すると、道のかたわらに、ちゃんとかんざしとこうがいが置かれていた、ということである。