Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • わらう天狗わらうてんぐ

    カッツーン! カッツーン! 切れのよい斧の音が、 向こう谷へこだまする。 若いきこりが山の斜面に足をふんばって、 一心に杉の木を伐っているのだ。

    ドッサーン! 木が倒れるたびに暗い杉林は、 ぽかりと明るくなっていく。

    「ふう! 腹がへったなぁ。 昼にすべぇ」 きこりは、 杉林の端にあるひときわ大きな杉の根本に腰をおろした。 大きなめんぱをひろげて、 麦めしを口に入れようとした時だった。

    「ガッハッハッ・・・・・・」 とつぜん、 どこからかものすごく大きな笑い声。 びっくりしてあたりを見まわしたが、 だれの姿もない。 再びべんとうを食べようとすると、

    「ガッハッハッハッ・・・・・・」。 どうやら笑い声は、 頭の上の方から聞こえる。 おそるおそる杉の木を見上げると、 てっぺん近くの枝に何者かがゆうゆうと腰かけている。 なおよく見ると、 なんと顔が真っ赤で、鼻がスリコギみたいな天狗が、ぎらぎらした目玉で見下ろしているではないか。

    「うわっ! て、 天狗様だぁ!」 きこりはべんとうを放り出して逃げ出した。

    次の日、 きこりはこわごわ山へのぼっていった。 昼までは、 何事もなく仕事を終え、 さて、 べんとうを食べようとすると、

    「ガッハッハッハッ・・・・・・」。 そして、 その次の日も・・・・・。 たまらなくなったきこりは、 神主のところへ飛んでいき、 しかじか・・・・。

    「そうか、 そうか、 天狗様とな。 やはりあの山には天狗様がござらっしゃったか。 あの大杉は、 天狗様のお気に入りの木なのじゃろう。 あの木は伐ってほしくないにちがいない。 だからお前をおどかしたんじゃよ。

    よし、 わしが話をつけてやろう」 神主は、 きこりといっしょに大杉のところへくると、うやうやしくのりとをあげた。

    「天狗様、 もうしわけなかっただ。 この木は伐らねえようにするから、 もうおどかさねえでくだせえまし」 そういうと、 大杉にしめなわをかけた。 すると、 次の日から、 けろりと天狗はあらわれなくなったという。