Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • キツネ火きつにび

    トミ、トミはいらんかね。」

    むかし、背中に小さな箱を背負った 「トミ売り」 のおじいさんがきた。

    どうだね。 トミを一つ買っておくれ。 これを買って神棚にあげておくと、銭がうんとたまるよ。」

    おじさんは、そんなことをいいながら、家いえを歩いた。

    あるはた屋にもやってきた。 そこのおかみさんは、このおじいさんに不吉な胸さわぎを感じた。 そこで、いいことを思いついてこういった。

    「うちにわね、トミはいるからいらないよ。」

    そのはた屋には、トミという名前の女中がひとりいたので、とっさにそういったのだ。

    「へい、そうですか。」

    おじいさんは、行ってしまった。

    その夜のことである。

    はた屋のうらの竹やぶには、かぜの神様というのがあって、近所の人はよくお参りにきた。  そのかぜの神さまにお参りにやってきた人が、血相をかえてはた屋にとびこんできた。

    「む、むこうにキツネ火が見えるだよ!」

    おかみさんが外に出てみると、むかいの山から右の方の家まで、てんてんとちょうちんのような火がつづいていた。

    赤い火は、ついては消え、消えてはつき、一町(約100m)ほどもつながっている。

    そんなことがあってからまもなく、キツネ火とつながった家では、景気がどんどん悪くなっていった。 その家は、トミを買ったのだそうである。

    村の「キツネツキ」だといわれていた子供が、「トミっちゅうのはキツネのことだよ」と、いったそうである。