むかし、 青梅の町はずれの裏宿に七兵衛という百姓が住んでいた。 ひるまは、ふつうに百姓をしていたが、 夜になると盗賊に変身した。 七兵衛はまれにみる俊足(しゅんそく)で、 いち夜に十数里を走ることができた。 あまり足が速いので、 笠を胸にあてて走っても落ちず、 1反に布をひいて走っても端が地につかないほどだったという。 ぬすんだ銭は、 貧しい人に分け与えた義賊(ぎぞく)だったという。
だが、 ついに捕らえられ、 処刑された。 笹ノ門でさらし首になったが、 ある夜暴風雨になり、 首は別当沢を流れて宗建寺の近くに着いた。 そこで住職が手厚く葬った。
その後、 七兵衛の屋敷跡では、ふしぎなことが次々におこった。 七兵衛の畑を耕したり家を建てたりすると、病人・事故・事業の失敗など、 悪いことばかり続く。 ついに、 だれも住む人がいなくなって、長いこと空地になっていた。 (現在は七兵衛公園になっている)
また、 青梅図書館のところも七兵衛の畑で、 以前、 郡役所が建てられたが、 何回も悪いことがおこったので、 敷地の一隅に地蔵堂が建てられた。
《イラストは七兵衛地蔵尊しおりより》