Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • 安心明神あんしんみょうじん

    むかし、御岳に梅本坊(ウメモトボウ)という悪僧(アクソウ)がいた。

    物を盗むは、女を犯すは、あまりの悪行(アクギョウ)ぶりにお上(カミ)から「捕らえよ。 殺してもよい」 という触れ状がまわった。

    村人たちは、手に手に鎌(カマ)やなたを持って梅本坊をやっつけようと立ちあがった。

    沢井村の福田五郎左衛門(フクダゴロウザエモン)は、先祖伝来の刀を持って先頭に立っていた。  村人たちは、じりじりと梅本坊を追いつめて行った。  多勢に無勢、さすがの梅本坊も、あちらこちらと逃げまわるうち、川向こうの檜沢(ヒノキザワ)で包囲された。

    うしろは崖、前には憎しみのこもった目でにらみつける村人たちが、いく重にもとり巻いている。

    「梅本坊、もう逃げられんぞ。  覚悟しておなわにつけ!」

    「なにを、こしゃくな、百姓どもめ!」

    梅本坊は、金剛杖(コンゴウツエ)をふりまわし、阿修羅(アシュラ)のように暴れまわった。

    「おう!」

    「やっ!」

    ついに梅本坊は追いつめられた。

    「たあっ!」

    五郎左衛門は、気合をこめて刀をふりおろした。

    「ううっ!」

    梅本坊は、肩深く斬りさげられ、息絶えてしまった。

    「おうっ!」

    村人たちは、大よろこび。

    ところが、その後、福田一族につぎつぎによくないことが起こった。

    「これは、悪人とはいえ、もしかしたら梅本坊のたたりかもしれない。」

    と、いうことになって、梅本坊を「安心明神」と名づけてねんごろにまつった。  すると、たたりもなくなり、安心して暮らせるようになったそうである。