Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • かぎの手地蔵かぎのてじぞう

    二俣尾の中宿にあるのは、かぎの手地蔵と呼ばれている。 かぎにまがっている道の片側に立っていて、いまでも花やおさい銭がたえない。

    ある日、成木の方から用事で出てきた男がここを通りかかった。

    「あっ、いけねえ、銭を持ってくるのを忘れちまった。 今からとりに帰ってたんじゃ、日暮れまでに帰れねえ。 どうすべえ。」

    男は、困ってしまった。

    ふと見ると、地蔵の前におさい銭がのっていた。 ちょうど買物をするだけあった。

    「お地蔵さま、まことにすまねえだけんど、ちょいとおさい銭を貸してくだせえ。 きっと返しますから。」

    男は、おさい銭を借りて、買物をすませた。

    いく日かして、男は借りた銭とお供え物を持ってやってきた。

    「お地蔵さま、ありがとうごぜえました。 お地蔵さまの銭で薬を買ったせいか、女房の病気がすっかり良くなったですよ。 ほんとうにありがとうごぜえました。」

    地蔵の顔が、にっこり笑ったようであった。

    この地蔵は、道行く人の安全を守っているといわれている。