Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • 山上の怪さんじょうのかい

    やはり高水山の話である。

    ある日住職は、信者の依頼で不動堂で護摩を焚いた。  赤く燃え上がる炎の向こうに波切白不動明王(ナミキリシラフドウミョウオウ)のお姿が浮かびあがっている。  やがて読経(ドキョウ)は佳境(カキョウ)に入った。

    と、とつぜん不動明王の安置された厨子(ズシ)が、ガタガタと激しくゆれだした。  信者たちは、驚き恐れてその場にひれ伏し、ひたすら手をあわせていた。

    またあるとき、庫裡の二階で村の青年団の若者数人が会合していた。  すこし酒もでていい機嫌(キゲン)でわいわいやっていると、グワラ、グワラ・・・・・。  すごい音とともに大地震のように二階がゆれだした。

    「わあっ!」

    若者たちは、おおあわてで階下にかけおりた。  ところが、下の者たちは怪訝(ケゲン)な顔をしている。

    「どうしただ。  あに騒(サワ)いでいるだよ。」

    「都、どうしたもこうしたも、今大地震みてえに・・・・・」

    「へえ、下じゃゆれもしなけりゃ音もしねえ。  しずかなもんだぜ」

    「ま、まさか、あのすごい音が聞こえなかったっていうのかよ。  おら、二階がつぶれるかと思ったぜ。」

    若者たちの顔は、まっ青だった。

    住職がぼそりといった

    「またか」

    「またかって、あのう、こんなことがときどきあるんですかい?」

    「ああ、あるともよ、  そんなことにいちいち驚いていたら、とてもここに泊まっちゃいられないよ。

    「へえ!」

    天狗のしわざか、神のいたずらか、高水山にはまだ現在進行形で山の神秘が存在しているらしい。