Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • のぞき岩の天狗のぞきいわのてんぐ

    夕方、仕事を終えたきこりたちは、山をおりはじめた。 のぞき岩、といわれる見あげるばかりの大岩の下を通りかかったとき、源さんという人が岩の上を指してさけんだ。

    「あっ、変なものがいる! 白い着物を着た大男が、見下ろしている。」

    仲間たちが、大岩を見上げたときには、もうだれの姿もなかった。

    「うそべえこくなよ。 だれもいやしねえじゃねえか。」

    仲間たちは、源さんの言うことを信用しようとしなかった。

    「うそじゃねえ。 たしかにいただ。 おっそろしく大きな男で、顔がまっかだった。」

    源さんは、いいはった。

    「よし、みんなが信用しねえなら、おれがたしかめてくる。」

    源さんは、大岩をのぼりはじめた。

    「よせよ。 もう暗いからあぶねえぞ。」

    仲間がとめるのもきかず、源さんは岸壁に足をかけてのぼって行った。

    もうすこしでのぼりきれそうなところまで行ったとき、ガラ、ガラッと岩がくずれた。

    「わっ!」

    源さんは、岩といっしょにすべり落ちた。

    「だからいったじゃねえか。 あんな高いところに、だれもいるはずはねえよ。」

    「ううーん、いてて・・・・・。 いいや、いただ。 あらは、天狗さまにちげえねえ。 いてて・・・・。」

    源さんは、足の骨を折る大けがをしながらも、まだそういっていた。

    天狗さまを見たおかげかどうか、源さんは百歳ちかくまで丈夫で長生きだった。