Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • 聖 松ひじりまつ

    沢井の横尾子に、大松がある。  むかし、ここに、都を追われた位の高い僧が住んでいた。 都で事件をおこし、遠い武蔵野の果てに追放されたものであろうか。

    僧は、小屋を建てて、庭に松を植えた。  松はぐんぐん大きくなり、傘状に枝を広げた大木になった。

    僧は、毎日この松を見上げて祈った。

    「どうか、一日も早くゆるされて、都へ帰れますように。」

    松は、僧の祈りを天にとどけえるかのようにさらに大きくなったが、都からの便りはなかった。

    失意の日々を送るうち、とうとう僧はここで亡くなってしまった。

    ある秋の日、そばに住む百姓が、畑のじゃまになると、松の一枝を伐り落とした。

    するとその晩、百姓は、いろりの火がはねて大やけどをしてしまった。

    「あの松には、坊さんのうらみがこもっているのかもしれねえ。  枝を伐るのはよすべえ。」

    その後、どんなに松が枝を広げても、じゃまになっても、だれも枝一本伐る人はいなかった。

    そして、いつしか聖松とよばれるようになった。  最近、松の根元から、僧の墓と思われる石碑と五輪塔(ゴリントウ)の頭と思われる石が掘りだされた。