虎柏神社の名は知らなくても、「お諏訪さま」と言えば、わかる方が多いでしょう。本殿が都指定有形文化財、境域が都指定史跡(この2つは「ふるさとの文化財40」で紹介済みです)、祭礼行事が都指定無形民俗文化財に指定されています。
指定の対象となる祭礼行事は、8月26日の「御殿入り)祭」から、27日の「椀飯の式」、「高峯神社祭」、28日の「お炊き上げ」、「例大祭」、「奉納相撲」に至る3日間です。「御殿入り祭」が「神体としての幣束をかやづくりの仮屋から、深夜に消灯して神歌を唄いながら本社に還幸させるという神事は稀」であり、また、祭礼の各所に固有の神事と古風な祭の形をよく遺していることが都指定の理由となっています。
「御殿入り祭」は、午後9時から始まります。「朝日の仮屋」で幣束・神宝類を氏子の代表が持ち行列すると、すべての燈火(とうか)が消されます。暗闇の中で、社殿の周りを右回りに神歌を唄いながら3周した後、幣束・神宝を本殿に納める神事です。
神歌は、1周目は「八雲立つ出雲八重垣妻籠に、八重垣つくるその八重垣を」、2周目は「みすずかる信濃の諏訪神を東路にうつして後は幾代へぬらむ」、3周目は「神の道は千道百道道七つ中なる道は神の通い路」と唄われます。3周することと神歌の内容は、虎柏神社に3社が合祀されていることに由来します。また、2周目の神歌は、明治3年(1870)に社号を諏訪明神社から旧号の虎柏神社に改め、諏訪上下神社を正殿から東相殿に遷した後につくられたものと思われます。
なお、祭礼は新暦になるまでは旧暦7月26日から28日に行われ、「御殿入り祭」の開始時刻は午前2時だったようです。旧暦7月26日は新暦8月26日で、二十四節気七十二候では、暑さもようやくおさまって万物の実が新たに実る「処暑」第二候「天地始粛」。月の出は午前零時です。五穀豊饒を祈る季節の「御殿入り祭」が、二十六夜に行われることには、どんな意味が込められていたのでしょうか。
虎柏神社へは都営バス(成木循環)、西武バス(飯能行き)で諏訪神社前下車徒歩1分、東青梅駅からは徒歩約20分の道のりです。
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