この雲竜図は、青梅の画家・小林天淵により、青梅住吉神社拝殿の天井に描かれています。竜は、仏法を守護し、水を司ることから火難守護の意味もあるとされて、寺院の天井にしばしば描かれてきました。拝殿が文政7年(1824)ころ完成とされるので、その前後に描かれた天淵45歳ころの作品です。画家としては初期の作品ですが、画の師・谷 文晁の画風を正確に踏襲した、南画風の筆致で描かれた大作で、天淵の代表作とされています。昭和39年に市有形文化財に指定されました。「天淵林謹質筆」の署名がありますが、「天淵」は画号で、竜が棲むという多摩川の天ヶ瀬淵に由来したとされ、「林謹質」は、幼少から書家である祖父・小峰峯真に学んだ書の号で、幼名「金七」と共通します。画家として出発するころのこの作品に、二つの号を併用したのでしょう。
その他、拝殿右手奥にある筆塚碑裏面の梅図、寺院の杉戸や掛物の図、俳諧額の絵、人物画像、町屋の襖の小品など、当時の青梅の人々の求めに応じ多くの作品を描き、「青梅文晁」とも称されました。
天淵は安永7年(1778)青梅村仲町に生まれ、酒店を営み、年寄として村政に携わりながら、書画のみならず詩歌・俳諧なども嗜みました。隠居後は、塾を開き六百余名の子弟を教育するなど、多彩な人生を送り、江戸時代末期の文久3年(1863)に86歳で没しています。
住吉神社は、青梅駅から東へ徒歩5分です。拝観希望の方は、事前に住吉神社へご連絡ください。
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