ものまね勘九郎

作成時期不明

 感九郎はあきらめないで鳴き疲れ、すっかりお腹がすいてしまいました。

「オナカガスイタ!」

「オナカガスイタ!」

 勘九郎の声がこだますると、

「人間だ、人間の声だぞお!」

 森の小鳥たちは驚いて一斉に飛び立ちました。

 勘九郎はひとりぽっちでした。

「オナカガスイタ!」

 高いこずえの上で勘九郎は一生懸命涙が出そうになるのを我慢していました。せっかくのクン太の好意でカゴから抜け出して森へやって来たというのに、とうとう自分の声を見つけることはできませんでした。いいえ、鳴き声が見つからなかっただけではなくて、森ではただ一人の友だちすらできないのです。

(さみしいなあ…)

 勘九郎の瞳は涙で一杯になりました。

(お店に帰ろう。やっぱりボクは物真似をして暮らすより仕方がないんだ)

 そう決心したとたんに、我慢していた涙があふれてポロポロと頬を伝いました。悲しくて悲しくて、勘九郎はわあわあと大声で泣きながら、もと来た空へ飛び立ちました。

「見たことのない鳥が、聞いたことのない声で鳴きながら町の方へ飛んで行ったぞ」

 その晩、森はその話でもちきりでした。

 そして実は、その時泣いた勘九郎の鳴き声こそ、探し続けていた自分自身の鳴き声だったのです。