横断歩道

平成30年09月19日(水)

『運が悪いでは終わらないですが、理不尽な規定だと思います。私の妻も以前それで警察のお世話になりました。私はそれ以来、歩行者より警察官がいるかどうかに目を向けてしまいます』

 仲間と鎧を着て城を歩くのが趣味の男性教員のメールです。とびぬけて背が高く、それだけで目立ってしまうので、日常の言動は控えめですが、整頓が苦手のようで、席を外したときの彼の机はゴミ屋敷のように他を圧倒して目立っています。

『当たり前です。ゼブラゾーンは歩行者優先です。反省しましょう』

 障害者の就労支援施設の管理部門で働く祭り好きの男性社会福祉士のメールです。おれは祭りの笛を吹くために生きていると言いながら、利用者のユニークな就労の場を作るために熱心に尽力しています。

『お疲れ様です。メールを伺う限りでは安全を確認しての走行にも思いますが、危険な運転とみなされてしまったんですね。ありがちなシチュエーションなので、気を付けます!警鐘ありうございます』

 認知症デイサービスの事実上の管理者をしている男性からのメールです。並んで歩けば、私が瘠せて見えるほどの体格で、かたくなだった認知症の女性の心を根気よくつかみ、ゴミ屋敷を片付けた活躍は新聞に紹介されました。コミュニケーション技法やカウンセリング技法の指導者でもあります。

『普通の道路でも横断歩道に人が立っていれば、車には一時停止義務が発生して、車を止めなければ一時停止違反ですもんねぇ。人対車では圧倒的に車が分が悪いです。停車してやり過ごすしかないですね。罰金が痛いですねぇ』

 パソコンが得意な特別養護老人ホームの男性相談員のメールです。嘘のない実直な人柄ですから、組織の実務を任せておけば安心です。相手によって言うことが違ったり、事実よりもことを大きく表現したりということのない正直さは、本人は自覚してはいませんが、周囲の信頼を集めています。

 どうですか?

 多様性と言ってしまえばそれだけのことです。誰だってそうだと言ってしまえば身もふたもありません。しかし、横断歩道違反事件の報告メールに対するたくさんの返信をこうして並べて見ると、実に個性的な仲間たちに囲まれている自分を改めて感じます。

 大切にせねば…としみじみと思うのです。

 後日捕まった横断歩道に車で出かける機会がありました。点数が心配なので、横断者が完全にいなくなるまで停止して待ちました。私を抜いて、何台もの車が横断歩道を通り過ぎで行きました。私の後ろについた不運な赤い車は、かたくなに停止し続ける私に腹を立てたのでしょう。

「行けよ、バカ野郎!」

 クラクションの音で、そう表現したのでした。