この山門は、一間一戸切妻造鉄板葺の四脚門です。 山門の前に立つと、紅染が目につきます。 なだらかに、波をうったようなその形は、湾曲した部分を中央に配置させ、軒の中に入り込ませることにより、門戸を広く、高く見せているようにも思われます。
自然石を礎石とし、扉はなく、主柱は円柱、控柱は方柱となっています。 屋根については鉄板葺に改められ、また、冠木、控柱の梁から上部は新規に造り変えられています。
門の特徴は、その材の造りに重要性を持たせています。 具体的には、控柱は一般的には組物を介し、桁を支持していることが多いところ、ここの造りは組物を介さず、直接桁を支持していること。 これと反対に、主柱は冠木を直接支えることが多いなか、ここでは組物を介して造られていることを特徴としています。 また、主柱の上部に臍を作り、古式の堀の入った木鼻が落とし込まれています。
この木鼻の絵様が、寛永17年(1640)に創立された、市内成木熊野神社本殿のものとよく似ており、17世紀前半の建築物と推定されています。
このように、主柱上部の珍しい意匠と控柱の素朴な様子との対比を特徴とするひとつの系譜に属するものとして、貴重な遺構であるとされ、市指定有形文化財になっています。 建立後、300年以上にも及ぶ時の経過を踏んでいますので、主柱等傷んでいる部分もありますが、当時からの姿を残し、また、組物などにかかわる構造の持殊性を見ながら、地蔵院を訪れてはいかがでしょうか。
所在地は、畑中2丁目583番地1、都営バス畑中公会堂下車、徒歩10分です。 |