分かり易い成年後見制度

平成27年12月07日(月)

類型別整理

 ここまでは被後見人等とひとくくりにすることが多かったのですが、実際には判断能力の程度に応じて保護の程度を変えるために、補助、保佐、後見の段階(これを類型と言います)ごと に保護の程度を配慮した内容を一覧にしたものが次の表です。


類型後見保佐補助
本人の状況自分では財産の処分ができない財産の処分に常に援助が必要財産の処分に援助が必要な場合がある
本人成年被後見人被保佐人被補助人
後見人成年後見人保佐人補助人
監督人成年後見監督人保佐監督人補助監督人
申立人本人、配偶者、四親等内の親族、市町村長など補助は本人の同意が必要)
同意権(取消・追認権)の範囲日常生活に関する行為以外全ての取消権・追認権(同意権なし)民法13条1項に定める行為(下記1)民法13条1項に定める行為のうち本人が同意した行為を審判により付与
取消権の拡張×必要に応じて審判で付与×
代理権の範囲全ての取引行為(包括的代理権・財産管理権)本人の同意を得て家裁が特定の行為について審判により付与
後見人の義務本人の意思尊重義務・本人の身上配慮義務

(1)元本の領収又は利用(預貯金の払い戻しなど)。

(2)金銭を借り入れたり、保証人になること。

(3)不動産など重要な財産(高額な商品を含む)について、手に入れたり手放したりすること。

(4)民事訴訟で原告となる訴訟行為をすること。

(5)贈与すること、和解・仲裁契約をすること。

(6)相続の承認・放棄をしたり、遺産分割をすること。

(7)贈与・遺贈を拒絶したり、不利な条件がついた贈与や遺贈を受けること。

(8)新築・改築・増築や大修繕をすること。

(9)一定の期間(民法602条に定めた期間)を超える賃貸借契約をすること。


後見開始の審判がなされると、裁判所から後見人に対して日常生活に関する行為以外の広範な取消権と代理権が与えられます (付与と言います)。後見人に同意権はありません。後見類型には同意を求める能力も不十分と考えられるからです。

保佐開始の審判がなされると、裁判所より保佐人に対して民法第13条第1項に定める取引行為の全てについて同意権と取消権が付与されます。また取消権の拡張と言って、請求によって民法13条第1項以外の法律行為について保佐人に同意権と取消権を付与する審判が可能です。保佐人の同意を得ずに行った取引行為は取り消すことができます。本人が同意した特定の行為について代理権付与の審判の請求も可能です。

補助開始の審判は、同時に代理権または同意権付与の審判を行って、本人が同意した特定の行為についての代理権と、民法第13条第1項に定める取引行為一部について補助人に同意権と取消権が付与されます。


 付与される権限についてだけ整理すると、以下のようになります。

類型同意権と取消権代理権
後見開始審判■日常生活に関する行為以外すべての法律行為について取消権と代理権付与(同意権なし)
保佐開始審判■民法13条第1項に定める行為について同意権・取消権付与
■別に請求により本人が同意した特定行為について同意権・取消権付与の審判
請求により本人が同意した特定行為について代理権付与の審判
補助開始審判■民法第13条第1項に定める行為のうち本人が同意したものについて同意権・取消権付与の審判

 つまり、3類型それぞれ開始の審判と同時に自動的に付与される権限と、被後見人等の判断能力を尊重して本人の同意を前提に審判によって付与される権限とがあるのですね。そして当初の類型が本人にとって不都合になれば、改めて別の類型開始の審判を請求することになります。複雑そうに見えますが、要するに未成年に対する親権者の権限が、3つの類型ごとに本人の能力に応じて展開される仕組みになっていると言っていいでしょう。