わか捨て山

作成時期不明

「王様…王様…」

 耳元で声が聞こえます。目を開けると、家臣たちか心配そうに王様の顔を覗きこんでいます。

「よかった、王様は生き返られたぞ!」

 大臣が叫ぶと、大広間の家臣たちは一斉に拍手をして王様の回復を祝福しました。

「大臣?」

 王様は心細げに口を開きました。

「わしは気を失っていたのか?」

「いいえ、一度は心臓も動かなくなりました。生き返られたのは奇跡としか言いようがございません」

「私は生き返る時に何か申さなかったか?」

「はい。確か姥捨て山など造りはせぬ、あのようなものを作ってはならぬ…とおっしゃいました」

 それを聞いて王様はほっとため息をつきました。

 あれほど頑固だった王様が、どうして突然に姥捨て山を作ることを諦めてしまったのか…それは誰にも解りません。そして、その後王様が、なぜあれほど年取った者に親切になったのか、さすがの大臣にも想像することさえできなかったのです。