おかるの恩返し

平成30年01月25日(木)掲載

 じいさまとばあさまが戻ったときには、どこを探してもおかるの姿はありませんでした。

「とうとう行ってしまったか…」

 ばあさまが言うと、

「あいつは森で暮らすのが一番仕合せなんだよ」

 じいさまが慰めました。

「せめておかるの気持ちを汲んでやらねば…」

 ばあさまは、おかるの残して行った織物で着物を作りました。黒くて汚らしくてみっともない着物でしたが、二人にとってはこの世で一番素晴らしい着物でした。そして不思議なことに、たとえどんな病気をしても、その着物さえ身にまとえば、嘘のようにけろりと治ってしまうのでした。

「おかるの恩返しだ」

「おかるの恩返しだ」

 じいさまとばあさまは黒い着物を大切にして、いつまでも元気に仲良く暮らしたということです。