絹本着色如意輪観世音像は、天ヶ瀬町の金剛寺に伝わる鎌倉時代の仏画の名品で、昭和32年に国の重要文化財に指定されました。
二個の半筒が合わさった形の軸木内面には墨書があり、乾元元(1302)年当時、金沢文庫で有名な金沢(現在の横浜市)にあった名刹称名寺の僧祐範の守本尊であったことが分かります。その後、経緯は不明ですが、祐範より金剛寺に寄進されたと伝えられています。
画は、画面と表装とを同じ絹に描いた「描表装造り」になっています。大きさは縦150cm、横54.5cmで、その中の画面は縦133cm、横48.5cmです。画面中央に、金箔金泥が施された如意輪観音坐像が、六本の手を持ち宝冠を頂いた姿で描かれています。背景は、下部に山と樹木と合掌する童子が、上部に山容と樹林が彩色されて配され、さらにその上方に金箔金泥の彩雲が描かれています。画面中央の観音像は金箔金泥も美しく、昔日の姿を保っていますが、背景部分は、大永2(1522)年から昭和までの数度の修繕にもかかわらず、剥落したためか、くすんで見えます。
画面周囲の描表装には、金銀諸種の彩色で、散華・小鳥・宝輪が細密に描かれています。また軸金具も、蓮華・唐草の精巧な金透彫が施された鎌倉期の優品です。
画の全体および各部分の詳細な写真は、郷土博物館の刊行図書「特別展青梅の名宝」で見ることができます。
金剛寺へは、都バス青梅支所から徒歩5分ですが、画は劣化を防ぐためもあり非公開です。
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