成木の安楽寺は、東側の仁王像や軍荼利明王像、表門脇にそびえる大杉をはじめ、多くの文化財を有する寺院です。正面右手の長屋門を抜けると左側に、書院風の大きな本堂が、山を背にどっしりと南向きに構えています。茅葺型銅板葺の寄棟造で、桁行12間(24.5m)、梁行7間(14.84m)と都下でも有数の本堂です。屋根は元茅葺でしたが、昭和51年保存修理の際、現在の銅板に葺き替えられました。現在の本堂は元禄6(1693)年建立で、その後東側の玄関が嘉永元(1848)年に改修されました。玄関部分は「新編武蔵風土記稿」には本堂と庫裡をつなぐ廊下に、庇を設けた程度に描かれていますが、現在は千鳥破風に式台付きの風格ある建築で、あわせて都の有形文化財に指定されました。
堂内は北側に4間、南側に4間の8部屋に仕切られ、正面と側面に広縁が配されます。北側西より2室目が御本尊を安置する内陣、その前が参列者の着席する外陣で、その外正面に「愛染院」の扁額がかかげられています。また、北東奥室には囲炉裏も設けてあります。
本堂の側面と背面は1間ごとに柱があり、内陣と外陣の間の敷居に3本の溝がある事、御本尊の安置される須弥壇後ろ両側に来迎柱がある事など、古い様式が残された建物です。
本堂棟札には大工の名はありませんが、須弥壇の墨書に「元禄七年久保田八郎兵衛、伊右衛門」と記され、浮島神社や報恩寺にも今井村の久保田姓の名があります。また、玄関は棟札から小布市(南小曾木)の青木治郞右衛門で、嘉永3年には表門(薬医門)も手がけていて、地元周辺に高い技術を有した大工が活躍していた事がうかがえます。
安楽寺へは都営バス成木循環「成木一丁目自治会館前」で下車してください。
問い合わせ 郷土博物館
☎ 23・6859
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