<目次>表紙
(第1章)カガミガイとの出会い
1.研究を始めたきっかけ
  2.化石の標本作り   3.発掘をした浜名湖について   4.カガミガイについて調べた事 
5.カガミガイの採集  
(第2章)カガミガイの生態とカガミガイの貝殻の研究
1.今年の研究テーマ
  
2.研究内容 (1)カガミガイの生態 @カガミガイの飼育観察   
A砂にもぐる速さ調べ
   Bカガミガイとアサリの浄化作用   C温度と動きの関係
(2)カガミガイの貝殻を使った研究@顕微鏡などでの貝殻の観察  
A貝殻の重さに対する強さ調べ  B微生物の入った土に対する貝殻の強さ調べ    
C身の回りの液体に対する貝殻の強さ調べ
D化石の貝についていた砂泥からの水質調べ      
(第3章)研究の結果と今後の課題
1.研究の結果
     2.今後の課題と感想  3.最後に(貝のタイムカプセル) 4.参考文献    5.お世話になった方々 

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3  発掘地の浜名湖について
 
貝化石が出てきたのは浜松市佐浜の台地をくずした崖の真ん中あたりだった。海にすんでいたはずのカガミガイがなぜ崖で見つかったんだろう。ぼくはとても不思議に思ったので、小学校の先生にお願いして、ナウマンゾウ発掘調査プロジェクトの責任者・静岡大学理学部の池谷仙之先生の浜名湖についての論文を見せていただいた。浜名湖は面積65平方キロメートル、周囲が114キロメートルの太平洋側で最大の汽水湖だ。汽水湖とは海水と淡水が混じり合っている湖のことで、幅200mの今切口で遠州灘とつながっていて、一日に4230万トンの海水が出入りする。昔、日本の都が京都にあった時は琵琶湖を近淡海(ちかつおうみ)、浜名湖を遠淡海(とおつおうみ)とよび、やがて近江(おうみ)遠江(とおとうみ)とよぶようになった。
下に、池谷先生の論文から図と先生の説明文のまとめをかいてみた。






  池谷先生から教えていただいたことによると、約25万年〜20万年前の頃は今の浜名湖のの形は全くなく、その付近は広く海になっていて、その海底の砂地にすんでいたカガミガイは、台風の時などに海底の砂泥といっしょにまき上げられて、ふだんは泥がたい積するような場所に運ばれてたい積したらしい。その後、海水面が低下したので、昔の海底のたい積物は今では陸地に現れるようになったということだった。
 発見したカガミガイについては、二枚の貝が閉じたものも片側だけのものもみんな横向きに埋まっていた。発掘後、ホームページで調べたら、「もし貝が、生きている状態で埋められたのなら、二枚貝は、ふだん、海底の砂泥にたてにもぐって暮らしているので、地層中では二枚の貝が合わさった縦の形で発見される」と書いてあった。そこで、横向きに重なるように埋まっていたカガミガイは、台風などの波で海底がかきまぜられ、砂粒といっしょにまき上げられて、そこにたい積したことをぼくたちに教えてくれているのだとわかった。
 そして、最近の浜名湖の様子について、浜名湖体験学習施設「ウォット」の人にうかがったら、昭和29年に今切口の固定工事をしてから入ってくる海水の量が増えて、海水によって陸からの豊富な栄養分が薄められた上に、アサリなどの天敵の魚貝類が増えるという問題が起きている事も知った。「今年はさらに天敵のタコが特に多いんだよ。」と言っていた。


今の浜名湖
(写真は浜名湖サービスエリアから浜名湖橋方面を見たところ)