<目次>表紙
(第1章)カガミガイとの出会い
1.研究を始めたきっかけ
  2.化石の標本作り   3.発掘をした浜名湖について   4.カガミガイについて調べた事 
5.カガミガイの採集  
(第2章)カガミガイの生態とカガミガイの貝殻の研究
1.今年の研究テーマ
  
2.研究内容 (1)カガミガイの生態 @カガミガイの飼育観察   
A砂にもぐる速さ調べ
   Bカガミガイとアサリの浄化作用   C温度と動きの関係
(2)カガミガイの貝殻を使った研究@顕微鏡などでの貝殻の観察  
A貝殻の重さに対する強さ調べ  B微生物の入った土に対する貝殻の強さ調べ    
C身の回りの液体に対する貝殻の強さ調べ
D化石の貝についていた砂泥からの水質調べ      
(第3章)研究の結果と今後の課題
1.研究の結果
     2.今後の課題と感想  3.最後に(貝のタイムカプセル) 4.参考文献    5.お世話になった方々 
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(2) カガミガイの貝殻の研究

@貝殻の観察
(目的)
現生と化石のカガミガイの殻を顕微鏡やルーペで調べて、その特徴やちがいを調べる。

(材料)
ぼくが採ってきた化石のカガミガイのうち、一番大きいものと一番小さいもの・現生のカガミガイ・スクール顕微鏡300SD・45倍マイクロスコープ・虫眼鏡・ノギス・はかり・スケッチ用紙・えんぴつ

(研究方法と結果)
(A)カガミガイの三つの貝殻の大きさと重さを測った。
一番大きな化石の貝殻
長さ7.2cm,重さ30.5g,一番厚い所6.5mm. 一番小さい化石の貝殻
長さ5.8cm,重さ20.5g,一番厚い所6mm.
女河浦で採った現生の貝殻 
長さ4cm,重さ4.5g, 一番厚い所2mm.
 

貝殻の内側を見たら、女河浦の貝は真珠みたいにスベスベして光っていたが、化石の貝殻の内側は少しざらざらして光っていなかった

左から、女河浦の貝殻・化石小・化石大

(B)顕微鏡(100倍)で女河浦のカガミガイを見たところ(化石のカガミガイは貝の厚みがありすぎて見られなかった。)
〔100 倍の顕微鏡で見た現生のカガミガイの表面の模様(成長肋)〕


成長肋の線には黒っぽく見える粒状のものが見え、中には黄色や茶色のものも見えた。黒っぽい粒は砂だと思うが黄色や茶色の粒は何だろう。 300倍では焦点が合わず見えなくて残念だった。

(C)45倍スコープで三つの貝殻を見た。

左から、女河浦の貝殻・化石小・化石大

それぞれ貝殻の一番ふちの部分を同じ倍率で見たのに、女河浦の貝殻は成長肋の間がせまくて6本筋が見えた。化石の一番大きかった貝殻の成長肋は幅がすごく広くて三本しか見えなかった。成長する幅にかなり違いがあることに気づいた。

(D)貝殻の表面をさわってみたら、三個とも貝のまわりから殻頂に向かってすべすべしていて、逆に殻頂の方からさわると手が引っかかってやすりみたいな感じがした。ぼくは次の図(ア)のように貝が殻頂からまわりに向かってだんだん下がる形で出来ていると思っていた。だから虫眼鏡で一つの成長肋をぐるり
と見てみた。
写真でとるとこんな感じ→
そうしたら、貝の真ん中辺りでは殻が(イ)のようにひっくり返っていた。つまり、貝殻が(ウ)のぼうしのように(エ)の所では下を向いていても前の(オ)の方にくると折り返していることに気づいた。二枚貝の貝殻で一番弱いのは、一番まわりのうすい所だ。そこを折り返しながらだんだん重ねて行っていることにおどろいた。アカガイのような波打っている貝殻ではその波型が、巻き貝ではらせん型が貝殻の強さを増しているというのは本で読んだが、二枚貝のカガミガイにもこんな折り返し法の工夫がされているのにとてもおどろいた。

(E)殻頂(貝のつなぎめの所)に対して平行にわれた化石の貝があったのでこれも虫眼鏡で見てみた。

割れた茶わんの割れ口みたいに貝の層が何枚もぴったり重なっていて、何mmかごとにはっきり見える線があった。

(まとめ)
 観察を始める前は、女河浦の貝殻と化石の貝殻は見た目の大きさがかなりちがっていたので、化石のカガミガイは女河浦のカガミガイよりずっと長く生きて、その結果、成長肋の数がふえて大きくなっていると思っていた。しかしスコープで見たら、成長肋と成長肋の間の幅がかなりちがっていたので、生きた年数だけでなく、成長した環境もかなりちがうのではないかと思った。また、縄文時代にカガミガイのふちを欠いて刃物として使っていたと本に書いてあったが、その堅さのひみつが貝殻の一番はしでも折り返して強くされている所にあると気づいた。
 このふちの折り返しについては、8月26日に、静岡大学の延原尊美先生の研究室にうかがって貝のことについて色々教えていただいた時に質問したら、貝が砂にもぐる時にひっかからないようにもぐる方向に対して逆らわない形で貝殻が出来ているということで、このことを専門に研究している外国の学者さんの論文を見せて下さった。