掲載日 平成19年6月15日 |
御岳山の御岳登山鉄道御岳山駅から、武蔵御嶽神社方面へ徒歩約15分の所に国指定天然記念物の神代ケヤキがあります。樹木の中で、ケヤキは寿命が長く大木に成長するので、天然記念物指定の大木が各地でみられます。 生物としての寿命を比べると、概して樹木は動物より長命です。長期間に及ぶ木の生長は、樹皮の内側にある形成層という顕微鏡的な組織の働きによります。形成層が何百年も活動を続け、外側に木を太らせ、内側に大木を支える丈夫な木部を作ります。固い木部も年月を経ると、洞や透き間ができ、小動物の生活の場となります。太い幹にはシダやコケ、ツル植物が着生します。大木は1個の生命というだけではなく、他の生命を共存させる小さな生態系のような存在になります。神代ケヤキは周囲の森林から離れた独立木ですが、他の生物が共存できる場になっています。 御岳山には落葉広葉樹林が多く残され、イヌブナ、ミズナラ、カエデの仲間等の大木がみられます。こうした大木もやがては倒れ、分解し土に溶け込み、森林の栄養分となります。1個の生命が、長い時間をかけて森林という大きな生命に引き継がれていきます。周囲を人工物に囲まれた神代ケヤキは、もしかすると周辺の森林を構成する木とは異なる方法で、生命の引き継ぎをするのかもしれません。 神代ケヤキや御岳山の森林の樹木には、動物的生命とは別の尺度の時間で流れる生命の推移があるようです。 | |
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市文化財保護指導員 櫻岡 幸治 | ||
参考資料『青梅文化財・史跡・天然記念物』より | ||