青梅市にある多くの文化財の中で、「赤糸威鎧」は国宝に指定されている2点のうちの1つです。この鎧は、武蔵御嶽神社に神宝として大切に保存されてきた平安時代後期の大鎧で、武蔵国府の最高権力者であった畠山重忠奉納と伝えられています。武士の棟梁が着用する甲冑として、平安期の洗練された優雅さと武具の重厚さを併せ持ち、全重量は25.85㎏あります。同時代の大鎧は、広島県厳島神社の小桜威、愛媛県大山祇神社の逆沢瀉威等、十余領にすぎません。その中でほぼ完存する最古の物で日本を代表する大鎧です。江戸時代、将軍吉宗・家治が上覧し、寛政12年(1800)松平定信が古器物の名品を記録した『集古十種』に記載され、有名になりました。
鎧は「札」という小さな板状にした鉄や革を、「威毛」という緒(糸または細い革)でつないで作ります。緒でつなぐことを「緒通し」の意味から「威」といいます。「赤糸威」「黒革威」「小桜威」などという鎧の名称は、威毛の色・材質・文様を冠してよばれています。
赤糸威鎧の赤糸は、往事は植物染料の茜で染められ今も鮮やかな赤色を保っています。しかしその技術は伝承されず、明治36年(1903)の補修では鉱物染料で染められ、その部分は現在退色しています。
赤糸威鎧は、武蔵御嶽神社宝物殿(土・日曜日、祝日開館)に展示されています。
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