武蔵御嶽神社の宝物では二つの鞍が文化財に指定されています。
その一つは、国宝の「金覆輪円紋螺鈿鏡鞍」で、もう一つは青梅市指定の「蒔絵鞍」です。今回はこの蒔絵鞍についてご紹介します。
大永年間(1521~1528)の製作と伝えられているこの鞍は、鞍、鐙、泥障、腹帯、鞍褥など一式が揃っています。
鞍は、馬の背に乗せ、安定した乗馬を維持させるためのもので、座る部分の前輪から後輪までの長さが約35cm、幅が約27cm、高さが約33cmあります。前輪は鞍壺に対しほぼ垂直に作られ、走っている時の前部への滑り止めの役割をしています。後輪は斜めに設置されており、跨るときの乗り易さや狭い鞍での乗り心地の緩和に役立っています。鐙は左右対になっており、乗っている時に足を置くもので、手綱と共に馬への行動を指図する用途もあります。泥障は馬の汗や蹴上げる泥などを防ぐもの。鞍褥は鞍の下に敷く布団であり、腹帯と共に馬をいたわるものでもあります。
また、これらのものへは彩色等が施され、鞍には梨子地に高蒔絵を施し、鉄製の鐙にも蒔絵が施されています。描かれたものは鶴と梅らしき枝や花が巧みに描かれ、泥障や鞍褥などは緋羅紗に華麗な金糸で波形模様が描かれています。
長年にわたり利用されていることから、剥落している所も多くなってはいますが、青梅市の文化財として指定されていながらも現在でもこれらは、毎年5月8日に行われる「日の出祭り」において、拝殿正面の回廊に奉安されています。
以上のようにこの鞍には刺繍のある泥障および鞍褥、腹帯等の付属品も整っており、蒔絵の施された鞍として優品であることから昭和43年11月3日に青梅市指定有形文化財となりました。
|