武蔵御嶽神社宝物殿所蔵の太刀には、国指定重要文化財が二件、重要美術品が一件、青梅市指定有形文化財が四件あります。今回はその内の市指定有形文化財「金銅丸鞘太刀拵(2口)」をご紹介します。
この太刀にかかわり、青梅市の歴史を物語る事柄はありませんが、武蔵御嶽神社への奉納品としての価値観や連綿と続く武蔵御嶽神社の歴史の一端を特殊な太刀拵が作られた時代をもって表しています。
指定では、写真の刀掛け上段に掛かる柄の部分と鞘の部分で一口、中段に掛かる鞘の部分のみで一口となっており、刀身はありません。拵えでは、薄く伸ばした銅板に金メッキを施したものが、木製の鞘等を覆う作りとなっており、現在でも木製部分が残っています。金銅面には彫りものはなく、縦に半分ずつ作られたものを中央で合わせ、覆輪を使わず、責金で留めて、形を作っています。
上段に掛かるものは、柄の長さが18・5cm、目貫金物は無く、目釘穴一つ、先端を覆う兜金と、下部に彫刻を施した猿手が残っています。断面は楕円形で、握る位置の上下部分はメッキが磨り減っています。鞘の長さは83cm、最大幅3・8cm、厚さ2・4cmで、口金物と一の足の足金物、それに付随する櫓金が残り、後方には二の足の足金物の跡が残っています。中央には責金があり、末端には石突が、そして、その手前にはもう一つの責金の跡が残っています。中段に掛かるものは鞘のみです。長さ64・5cmで、石突は無く、一の足と二の足の足金物が残っています。一の足の櫓金はほぼ原形をとどめ、二の足は、飾り部分がありません。
これらは鎌倉時代から南北朝期ごろに製作されたものと思われ、当時盛行していた華美の太刀拵えであることと、現在伝世されている例は極めてまれであること、わずかに奈良の春日大社、和歌山の丹生都比売神社に存する程度で青梅市にあっては貴重な遺品であることを理由に、昭和51年11月3日、市の有形文化財に指定されました。
宝物殿に常設展示されていますので、土・日曜日の開館日に合わせ、刀剣技術のすばらしさを確かめてみてはいかがでしょうか。
|