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掲載日 平成21年8月15日 |
武蔵御嶽神社宝物殿には、神の太刀として抜く事の許されないまま伝わったという鍍金長覆輪太刀があります。文化財保護法の制定に伴い、昭和32年8月1日、重要文化財に指定されました。青梅市における9件の重要文化財のうちの1件で、太刀と太刀拵とで指定されています。刀身は、刃部87.6cm、茎29cm、目釘穴は1か所。銘は無し。庵棟、鎬造りで、鎌倉時代中期ころのものと推定されています。一方、拵は、鍍金、鍍銀で飾られており、柄部分33.5cm、鞘94.3cm、鞘口付近の幅4.86cm、厚さ1.63cmで、肉取りは薄く、刀身共の重さは約4kgの大太刀です。拵に彫られた図柄には特徴があり、柄部分に施された4か所の俵鋲や目貫金物、鞘部分の一の足金物や二の足金物、帯執金物、責金物などに「金」の文字が線刻されていることです。これは金御嶽を意としたもので、金峰金剛蔵王権現へ奉納するために改装した部分とも考えられています。地板の全面には蓮の花や葉、蔓先などが彫られ、空間は魚子地に作り上げています。正面を向いた形で彫られた蓮の花は佩表で4か所あり、木瓜形の蓮の実に8枚の花弁が描かれ、これを中心として、左右に荷葉と半開きの蓮の花が繰り返し彫られています。これらの柄は華麗な意匠でありながらも、宗教的な雰囲気も込められたものとなっています。拵では、本体となる地板は鍍金で仕上げられ、それを縁取るように覆った覆輪は、鍍銀仕上げとなっています。兜金や猿手、柄元金物などの付属物も鍍銀仕上げとなっており、金と銀との対比が鎌倉時代になって、武具へも及んだというこの時代の特色を表しています。
神宝として鎌倉時代中期から伝えられたこの大太刀は、御嶽における神への信仰の深さを裏付けるかのように、刀身と鞘が、共に当時からのままの姿で残されてきたところにまた一つの価値が認められています。
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市文化財保護指導員 鈴木 晴也 |
参考資料『青梅文化財・史跡・天然記念物』より |
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