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  • 更新日 2013年7月24日
  • 青梅市「広報」より
    《第九十回》ふるさとの文化財

    宝寿丸黒漆鞘太刀ほうじゅまるこくしつさやのたち
    【国指定重要文化財】
    掲載日 平成20年9月15日

    市内には国の指定文化財が16件あります。そのうち、武蔵御嶽神社が所蔵する物件は9件と、全体の半数以上にものぼっています。その中で、今回は国指定重要文化財「宝寿丸黒漆鞘太刀ほうじゅまるこくしつさやのたち」をご紹介します。

    宝寿丸の太刀は、同じ系統の刀匠が作った国の重要文化財の大太刀と国の重要美術品で一般的な大きさの太刀の二振があります。今回ご紹介する大太刀は明治44年4月17日に指定を受け、銘は「宝寿」です。鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて、奥州(青森・岩手)に存在した刀匠の作で、「宝寿」の銘の前に多くは「平泉住」という文言が付される場合が見受けられます。

    社伝によると、建久二年(1191)畠山重忠はたけやましげただ奉納とされ、『新編武蔵風土記稿』にも「重忠自筆の願文を添へて寄附する処なり、重忠の負太刀おいたちとも陣太刀じんたちとも云い伝へるなり」とされています。しかし、もう一方の太刀のなかごに彫られた正中(1324~1325)の元号や銘からすると、重忠(1164~1205)没後の作となり、重忠奉納と言う事も伝説的なものではないかと云われています。

    丸棟まるむね鎬造しのぎづくりのこの大太刀は全長153.5㎝と、一般的な太刀の倍ほどの長さです。茎の長さは35.5㎝、重量は2.67㎏、反りは最大で8.6㎝、中央から左右に反っています。切先きっさきは、大切先おおきっさきに分類され、鍛えは板目肌いためはだ杢目肌もくめはだを交え、刃文はもん丁字風ちょうじふう乱れ。目釘穴は3か所あります。刀身の佩表はきおもて佩裏はきうらには、刃幅いっぱいに倶利伽羅くりから三鈷剣さんこけんの図が施されています。龍は、研磨により線彫や毛彫などは磨滅していますが、刀幅いっぱいに蛇体をくねらせ、手足共に力強く剣をつかんでいます。竜頭は雲気を吐き、剣の先を呑み込もうとしています。また、この彫物とは別に、切先の少し手前には弓矢のやじりが激突したような痕があります。そして、竜の右手付近には大きな刃こぼれがあります。これらがその当時の激しい合戦を交えたものかどうかは不明です。また、長大な倶利伽羅の彫り物と三鈷剣の彫物は、金剛蔵王権現こんごうざおうごんげんの祭祀にちなみ、あえて表裏に彫られた可能性も考えられます。

    南北朝時代を代表する大太刀の様相が当時の歴史の営みを思い起こさせるばかりでなく、伝説をも生み、私たちの身近なところに本物は存在しています。秋分の御岳山へ文化財探訪をお薦めいたします。

    市文化財保護指導員
    鈴木 晴也
     参考資料『青梅文化財・史跡・天然記念物』より
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